Restoration
修復

私達が修復に取り組む際に大切にしていること、それは楽器のオリジナリティの保存と復元、すべての作業において後世の修復者にバトンを繋ぐため、再びやり直すことができる修復を施すことです。
日本ヴァイオリンでは数々の名器を扱ってきた膨大なアーカイブと経験に基づき、常に新しい技術を取り入れながら、さまざまなメーカーのスタイルの特徴を細部まで追跡します。
その上で、見た目を良く、楽器として構造的に健全で、そのポテンシャルを最も引き出せる演奏に最適な状態に導きます。
大規模な修復プロジェクトも承ります。ぜひお任せください。
修理と修復はしばしば同じ意味に定義されますが、 楽器製作者の用語ではそうではなく、修理とは損傷や調整不良を直し実用可能な状態にすることです。
修復には1つの楽器に対して多数の技術が必要であり、修復の技術とは製作者のオリジナルのスタイルを維持しながら、膨大な時間の経過を伴う修理部分を楽器の全体的な外観に調和させることを意味しています。
修復技術はヴァイオリン製作の歴史に比べると遅く、19世紀中頃に始まりました。
19世紀以前の弦楽器製作者は、損傷した部品を捨てることが多かったと言われています。かのストラディヴァリ自身も、損傷した表板を修理するのではなく交換したことで知られています。
今日、古い楽器の供給が少なくなり傑作の価格が急騰する中、修復技術はますます重要になっています。
17世紀以後の最高のオールド楽器の修復は、音響とスタイルに関する多くの大切なことを教えてくれます。
同時にイタリアの偉大な職人たちにとって、対称性が彼らの最も大切な偶像ではなかったことも認識させられます。
これらの傑作を扱い、尊重することで、私達修復者は自身の手にかかる銘器を次の世代へ繋げていかなければならない重い責任を痛感しています。
優れた修復者は、自身が表現者ではないことを認識しており、むしろ保存と修復という理念に忠実な職人になることを目指しています。さまざまなメーカーの特徴の理解と尊重、音響原理の理解に加えて、修復者は楽器の音を可能な限り良くするよう努力すべきであり、演奏家との絶え間ない交流も大切な要素になります。
修復の専門知識は、まずは高品質の楽器を自身で製作することから始まります。
修復者は自分の技術に自信と信念を持っていますが、自分のスタイルを他の製作者のスタイルに従わせるだけの論理的判断力が必要であり、何よりも利己心なくそれを喜んで行う能力が大切になります。
加えてヴァイオリンの修復は、自身の考えに固執して教条的に行われるものでもなく、常にオープンな探究心を持って取り組むべきと考えています。新しい技術は情熱を持った職人同士の情報交換と、さまざまなアイデアやアプローチを実践する意欲から直接生まれ、個々の高い能力と創造的なイメージに委ねられています。
割れ修理
アクシデントによって生じた割れや過去の古い割れの修理跡を一度開いて歪みや古い汚れを取り除き、再接着した後、ニスの補修を施します。


アーチ修復
長年の弦の張力や過去のバスバーやパッチ修理によって生じたアーチの変形や歪みを本来の形に戻す作業です。石膏型を取り、へこんだ箇所と膨らんだ箇所に熱した砂袋を当てて同時に修正します。本来のアーチに修復されることで音質の大幅な改善があります。



エッジ修復
アクシデントにより欠けてしまったエッジや、古い修理跡を取り除き、新たに木材を足してオリジナルの全体の雰囲気により調和するように作り直します。楽器本来の美観を取り戻します。

