Care楽器の点検と手入れ
ご使用前に
ヴァイオリンは自然の木材をニカワで接着して出来ている楽器です。
そのため他の楽器以上に繊細なところがあり、取り扱いには気を付ける点があります。
楽器が良い状態でなくなると音が悪かったり弾きにくいなど、本来の性能が発揮出来なくなってしまいます。
強度
ヴァイオリンは正しい取り扱いをしている限りは充分な強度を持っていますが、木材で出来ていて厚みもそれほど厚くはありませんので、転落や圧迫など強い力が掛かると破損してしまう事があります。
また弓も落としたりぶつけたりすると破損の危険があります。
充分注意して取り扱いましょう。
極端な温度・湿度や急激な変化を避ける
ヴァイオリンに適した温度・湿度は概ね人間が快適と感じる位です。(例:温度15℃~25℃、湿度40%~60%)
特に気を付けたいのは夏場の過熱で、車内に置いたり直射日光が当たる場所は避けます。
また高温時に長時間外を持ち歩く時も注意が必要です。
多湿の時期はケースに除湿剤を入れたり適宜部屋を除湿します。
冬季は逆に乾燥が強くなる事がありますのでダンピット(加湿用具)を使用したり部屋を加湿します。
また屋内と屋外で温度・湿度の差が大きくなる時期はなるべく急激な変化にならないよう気を付けましょう。
使用にあたって
全体の点検
楽器と弓にはがれ・割れ・欠け・傷など何か異常は無いか目視で点検します。
よく見る癖を付ける事で問題があっても速やかに見つかるようになります。
駒の立ち方の確認
点検の中でも駒の確認は大切なものの一つです。
駒は接着して固定されている訳ではなく、本体と弦の間に挟まっています。
糸巻を回せば弦が少しずつ駒を引っ張るのでいつの間にか駒が傾いてしまう事があります。
そのままにしていると駒が曲がったり倒れたりする原因になります。
糸巻で音合わせをする前後には必ず駒の傾きを確認しましょう。
楽器を構えた時に駒の自分の方に向く面がまっすぐに立つのが正しい立ち方です。
最初はなかなかわかりにくいかも知れませんが、いつも意識する事で自然にわかるようになっていきます。
傾きの直し方は少々慣れも必要ですが、あらかじめテイルピースの下にクッションになるものを挟んでおけば失敗しても楽器に傷を付けずに済みます。
難しい場合はご相談下さい。
使用後の手入れと保管
弓の毛は張ったままにせず緩めますが、楽器の弦を緩める必要はありません。(弦を緩めると駒や魂柱が動いたり倒れる事があります。)
ヴァイオリンを弾き終わったら必ず汚れをクリーニングしましょう。
基本的にはから拭きが最も安全です。
アルコール等薬品類の使用は絶対におやめ下さい。
柔らかいガーゼなどの布を2枚用意し、手やあごが触れた部分の汗と、駒の周りに付いた松脂をそれぞれ別の布で丁寧に拭き取ります。
弓についた松脂も軽く拭きますが、毛は拭かないようにします。
注意するのは力を入れず軽く拭き取る事で、特に駒の周りはあまり指を深く入れず軽くぬぐうようにします。
力が入り過ぎると駒を動かしたり板の弱い部分を破損する事があります。
「丁寧にしかし軽く」拭き取りましょう。
保管は通常はケースにしまうのが一番安全です。
きちんとファスナーや留め金が閉まっているか確認しましょう。
急なトラブルと対処法
糸巻が止まらない
糸巻を回す時は必ず糸巻を穴に少し押し込みながら回します。
また、弦の巻き方が正しいか確認します。
弦が切れた
自分で弦を交換する時はまず古い弦を外し、駒とナットの溝を濃い鉛筆(2B以上)でこすります。これで弦の滑りが良くなります。
テイルピースの穴に弦の端のボールを入れ、細いスリットの奥までしっかり入れて留めます。
次に糸巻の穴に弦を通し、糸巻に巻き付けてゆきます。
駒が傾いていないか気を付けながら音程を合わせます。
定期的に弦を全部交換する時も同様ですが、必ず1本替えるたびに駒が動いたり傾いたりしていないか確かめながら進めます。
上手く行かない時は楽器店に持ち込みましょう。
同時に他に問題が無いか点検出来ます。
弦が切れた時は切れた弦もお持ちいただけると原因がわかる場合があります。
また以下のような場合はご自分での対処は難しいので楽器店にお持ち下さい。
- 駒が倒れた (弦を緩めて、テイルピースの下に布を挟んでおきます)
- 魂柱が倒れた
- 落としてしまった(目立った損傷がなくても楽器の調子が変わってしまいます)
定期的なメンテナンス
ヴァイオリンの弦や弓の毛は消耗品です。
弦が古くなると音量が落ちるだけでなく音程も正確でなくなってきます。
弓の毛が消耗すると軽く弾いても上手く引っ掛からず無駄な力が入るようになります。
使う頻度にもよりますが、1年以内には弦と毛の交換と同時に点検を受けるようお勧めいたします。
また楽器や弓の状態も時間とともに変わってゆく事があります。
定期的に点検を受け適切なメンテナンスを施す事で良好な状態を保ち、ヴァイオリン演奏をお楽しみ下さい。