日本ヴァイオリン

Ansaldo Poggi 1945

アンサルド・ポッジ1945年製

アンサルド・ポッジ(1893–1984)は、20世紀のイタリアを代表するヴァイオリン製作家であり、ボローニャ派の頂点を築いた人物として知られています。彼はエミリア=ロマーニャ州ヴィッラフォンターナに生まれ、幼少期より木工職人であった父親から手ほどきを受けました。その後、名匠ジュゼッペ・フィオリーニに師事し、ストラディヴァリの製作様式を基礎としたクレモネーゼの製作技法を学びました。1920年代にはすでに国際コンクールで金賞を重ね、その完成度の高さゆえに「これ以上の出品は控えるべし」と評された逸話も残っています。

ポッジはその後も精力的に製作を続け、1960年代にはイタリアを代表する巨匠として世界的な評価を確立しました。彼の工房を訪れた若い製作家たちは、その精度と美意識の高さに深い影響を受けたと伝えられています。1984年に亡くなるまでに約300本を超えるヴァイオリン、少数のヴィオラやチェロを製作し、その多くが今なお世界中のソリストたちによって演奏されています。

戦時中も製作を絶やさなかったポッジにとって、1945年という年は特別な意味を持っていました。長い戦乱が終結し、平和の訪れとともに新しい創作の息吹が戻ったこの年に製作された本作は、彼の技術と精神が最も成熟していた時期の作品といえます。

1945年製のこのヴァイオリンには、ポッジ特有の均整の取れた造形美が見られます。アーチは明快でわずかに高く、エッジの処理は極めて繊細です。スクロールには柔らかな抑揚があり、f字孔は縦に引き締まりつつも優雅な開きを持っています。ニスは赤みを帯びたオレンジブラウンで、透明感のある光沢が木目の美しさを際立たせています。

音色は、明晰さの中にポッジ独自の温かみが融合しています。高音には艶があり、低音には深みと包容力が感じられます。レスポンスは非常に速く、楽器全体が一体となって響く力強さがあります。

製作地
イタリア ボローニャ
カテゴリ
モダン