Francesco Bissolotti 1987
1987年製フランチェスコ・ビッソロッティ
フランチェスコ・ビッソロッティは現代クレモナ代表する製作家、指導者でもあり、現在活躍する多くの製作家を輩出しました。
フランチェスコは1929年4月2日、クレモナ北部の小さな村ソレジーナ(Soresina)に生まれ、家具職人の叔父の影響で若いうちから木工を始めました。独学でヴァイオリンを製作したのち、1957年にクレモナ国際弦楽器製作学校に入学し、ピエトロ・スガラボット、フェルディナンド・ガリンベルティ、ジュゼッペ・オルナーティといった名だたる巨匠達に師事しました。
その後ビッソロッティはクレモナ国際弦楽器製作学校の教師となり1961年から1983年まで歴任しました。
1962年にプラティナ通りに最初の工房を開き、同時期シモーネ・フェルディナンド・サッコーニに師事するようになります。
1962年から1972年にかけてサッコーニはしばしば数ヶ月をクレモナのビッソロッティの工房で働き、二人で当時パラッツォ・デッラルテ(Palazzo dell'Arte)に保管されていたストラディヴァリの遺品コレクションの研究、再編成を成し遂げました。
この作業がサッコーニの研究の集大成である
"The Secrets of Stradivari"(伊"I Segreti di Stradivari")の出版にいたる下準備となります。二人の共同作業は続き、サッコーニが工房を指揮するニューヨークのウーリッツァー社とのコラボレーションも行っています。
製作活動と並行して、音響やニスに関する研究や実験にも積極的に取り組み、また彼自身もアマチュア演奏家としての側面もあったため、演奏家の求める実用的な音色を備えた作品を数多く残しました。
ビッソロッティはその生涯に約600台の楽器を製作し、息子ティツィアーノが若くして亡くなりましたが、その後マルコ・ヴィニーチョ、マウリツィオ、ヴィンチェンツォの3人息子とともにクレモナのサン・パオロ広場の工房で活動を続け、2019年1月31日、惜しまれつつもこの世を去りました。
フランチェスコ・ビッソロッティの作品には、クレモナの古典的モデルに着想を得た作品が多く存在します。今回ご紹介する1987年製の本作品は1735年製のグァルネリ・デル・ジェスモデルを使用し、58歳という円熟期に製作されました。細部にまでこだわった仕上げの方法、アルコールニスの色合い、質感等から彼のオリジナルティーあふれる作品になっております。
華やかなバランスのいい洗練された音色を持ち、極めて実用性の高い逸品です。