Hieronymus AMATI Ⅱ, c1719
1719年製作ヒエロニムス・アマティ2世
見事にフラットなグランドパターンで1719年頃に製作されたこちらのヴァイオリン名器、ヒエロニムス・アマティは、英国ロイヤル・オペラ・ハウス・オーケストラのコンサート・マスターを務め、チャールズ国王戴冠式コンサートマスターを務めたヴァスコ・ヴァッシレフ氏が長年演奏し続けてきた極めて貴重なヴァイオリンです。
ヒエロニムス・アマティ 2 世は、1649 年ニコロ・アマティの長男として生まれました。弟子であり、後継者でもあります。
クレモナのヴァイオリン製作の芸術を育んだ父ニコロ・アマティの成功は、フランチェスコ・ルジェリ、アンドレア・グァルネリ、アントニオ・ストラディヴァリといった著名な製作家の世代を生み出し、他の都市へのヴァイオリン製作の普及に大きく貢献しました。
ヒエロニムスは 1670 年にはすでに頭角を現していました。父ニコロの死後 1684年に工房を引き継ぎ、精力的に製作を続けますが、1697 年彼は財政面で困窮し、ピアチェンツァへ移住を余儀なくされます。
その 18 年後、再び故郷クレモナへ戻り製作を再開しましたが、その後に彼は弟子を取らなかったため、アマティ一族のヴァイオリン製作は 1740 年の彼の死をもって終わりを告げました。
17 世紀後半のクレモナではストラディヴァリをはじめとする有力な競合製作者たちが多く、父親の代ほど大きい成功を収めることは困難な時代でした。しかし彼はやはり才能豊かな製作家で、その作品はストラディヴァリの黄金期に匹敵すると言われています。
彼は同時代のストラディヴァリの長所をはっきりと認識しており、父ニコロが好んで製作した高く立体的なアーチをわずかに下げ、よりフラットで立ち上がりの早い豊満なアーチを作り上げ、極めて演奏性の高い作品を残しました。
彼がピアチェンツァからクレモナに戻り、再びヴァイオリンに向き合いはじめた1719年頃に製作されたこのヴァイオリンは、父ニコロとストラディヴァリの特徴を掛合わせたような、フラットでありながら立体感のある豊満なアーチに、力強く濃いレッドブラウンのニスを纏っています。その音質は太く深く艶やかでありながら、音離れのいい切り立った反応のよさがあります。