Michael Angelo Bergonzi "ex-Shlomo Mintz" 1764
1764年製作ミケランジェロ・ベルゴンツィ"ex-Shlomo Mintz"
クレモナの偉大なグァルネリ・デル・ジェスの後継者がいるとしたら、それはミケランジェロ・ベルゴンツィであると言われています。
ミケランジェロ・ベルゴンツィは、1721年クレモナのサン・ルカ教区に生まれ、父カルロのもと製作の手ほどきを受けながら早くから父の仕事を手伝いました。ストラディヴァリがこの世を去った8年後の1745年、カサ・ストラディヴァリと呼ばれるストラディヴァリの家と工房に父カルロと家族と共に移り住みます。そのわずか2年後の1747年2月にカルロは亡くなりますが、その後もミケランジェロはカサ・ストラディヴァリで製作を続けました。
この時点で、彼は200年余りに亘って連綿と続いたクレモネーゼの古典時代の伝統全体の脆弱な細い糸を紡いだ最後の1人でした。
ミケランジェロは多くの点で、アマティ、ルジェリ、グァルネリ、ストラディヴァリの4つの著名なクレモネーゼのアトリエの輪を閉じました。この4つのアトリエは密接につながっていますが、それぞれに独自のスタイルと技術的なアプローチがあります。グァルネリ家は、見習いの直接の系統でアマティと強い結び付きがあり、一方ストラディヴァリとルジェリには異なるモチーフと方法がありました。ベルゴンツィはその2つの間に完璧に当てはまります。
そしてミケランジェロはクレモネーゼの古典時代の最後の年に、アマティの静謐な完璧主義と、デル・ジェスの即興の自由という2つのスタイルを融合させました。
1764年におけるこのヴァイオリンは、オレンジがかったやや硬さのあるニスを纏い、それは当時ヴァイオリン製作の中心地として繁栄していたヴェネツィアで使用されていたものと密接な関連が見受けられます。
サウンドホールはカルロによるものよりわずかに大きく切られ、不均等で、有機的な優美さがあります。
スクロールは細く突き出た目を持つ、カルロによる原型をデルジェスのように伸びやかに彫刻されています。
そしてやや高く丸みを帯びた独特のアーチと、裏板には広葉樹のブナ材が用いられ、その自然な密度は演奏家に求められる力と音質の深さを備えています。職人技と個性の決定的な資質、それらすべてが結びつき、音の独特の幅と高貴さを示しています。
このヴァイオリンは世界的なヴァイオリニスト、シュロモ・ミンツに1995年頃より10年間愛用されました。
彼の言葉を下記に引用します。
「このヴァイオリンには独特の音色があり、他の多くの楽器を試した後、私はこのヴァイオリンで演奏することを選びました。
また、審美的に美しく、非常にユニークな音質を携え、さらにプロのアーティストが求めるすべてのものを持っていました。
このヴァイオリンで、イスラエル室内管弦楽団とヴィヴァルディの全作品を収録した9枚のCDを録音しました。これらのCDは、聴衆や評論家から賞や大絶賛を受けました。
まさに自分の音楽観を表現する機会をたくさん与えてくれたのです。
私のプロとしてのキャリアにおいて、このヴァイオリンはとても重要で主要な部分となりました。」