Antonio Stradivari 1731 "Maurin, Rubinoff"
アントニオ・ストラディヴァリ 1731年製 「モーラン、ルビノフ」
ストラディヴァリウスの代表作の一つとして数えられるのが、1732年製「ウィーン、ブッシュ」を彷彿とさせる堂々たる様相を持つ、この1731年製「モーラン、ルビノフ」です。
この楽器の歴史は、フランス人ヴァイオリン奏者ジャン・ピエール・モーラン(1822-1894)が最初の所有者として記録されていることから始まります。彼はパリ国立高等音楽院の教授を務め、「最後のベートヴェンカルテット・ソサエティ」のリーダーとしても活躍した人物であり、その名が今もこのストラディヴァリウスの愛称として残されています。
その後、当時の上流階級で人気を博した肖像画家であり、在ローマ・フランス・アカデミー館長も務めたアントワン・オーグスト・エルネスト・エベール(1817-1908)の手に渡ります。シャルル・ユジェーヌ・ガンの記録によれば、1870年には彼が所有していたとされています。エベールの没後、夫人はアメリカ人コレクターであるネイサン・E・ポスナーの依頼を受け、アルフレッド・ヒルに売却しました。
1928年には、ウーリッツァー社を通じて著名なヴァイオリン奏者デビッド・ルビノフ氏が購入し、生涯手元に置くことになります。この時期、興味深い噂が囁かれました。それは、かつてロシア帝国を治めたロマノフ家がこの楽器を所有しており、1917年の革命の混乱の中で皇族の一人がパリへ持ち出したというものです。確たる証拠は未だ発見されていませんが、この楽器の数奇な運命を物語るエピソードとして語り継がれています。
ルビノフ氏の没後、夫人が日本人のバイヤーに売却し、2013年からは名門・宗次コレクションに加えられています。








